Concrete CMSの歴史

 

はじまり

Concrete CMS のはじまりは、Franz Maruna(フランツ・マルナ)とAndrew Embler(アンドリュー・エンブラー)との出会いから始まります。80年代、地元の電子掲示板(BBS)でコンピュータネットワークの洗礼を受けて育ちました。二人とも、テクノロジーとデザインに関して強い興味があり、インターネットとウェブサイト産業が始まると同時に、ウェブの世界にのめり込んで行きました。

二人は、オレゴン州ポートランドの地元代理店によるプロジェクトで働いているときに出会いました。二人は意気投合し、共にウェブのコンサルティングやプロジェクトを進めて行き、その関係は10年以上に及びます。

 

Concrete v.1 - 誕生 (2003年)

小さい「普通」のインタラクティブメディアスタジオを切り盛りしているとき、フランツは、地元の広告代理店がアメリカの公共広告機構(AdCouncil)から受注した、「ルイス=クラーク探検隊200周年記念祭」のサイト制作の仕事を請け負いました。

3ヶ月にわたるこの巨大プロジェクトは、90人もの、大学教授、ネイティブアメリカン関係者、観光局などの関係者がサイト制作に携わり、様々な視点を持つ人々の考えがぶつかり合うプロジェクトでした。

こういった環境の中、古いウェブデザインのコンセプト、「コンセプト」ー「納入」ー「変更」のシンプルなワークフローが全く役に立たないことに、彼らはプロジェクト開始後、一週間で気づくことになります。

もっと柔軟に、そしてプロジェクトの期限内に、作業を進める必要がありました。

こうして、Concrete CMSが生まれました。

すべてゼロからのスタートでした。PHP4をベースに、当時のメジャーなCMSである、Mambo、TeamsiteやStoryServerにあった制約を取り除き、以下の3つのルールでサイト運用ができるシステムを開発しました。

  • 簡単に - マイクロソフトのWordを使いこなせる人なら、簡単にサイト運用が出来る事。
  • 柔軟に - 数々の大手代理店の下で働いて来た彼らは、従来のCMSが、広告代理店が要求する柔軟性に対応する事が出来なかったことを知っています。それらの技術的な限界をなくし、クライアントが自由に意思決定とサイト運営が出来るようにすること。
  • 堅固に - AdCouncilは、全米でテレビコマーシャルを放映する予定で、サイトは秒間1万人ほどの訪問者が来ると予想されました。

こうして、Concrete CMSを使ったサイトの第一号である「ルイス=クラーク探検隊200周年記念祭」のサイトが完成しました。

 

Concrete v.2 - (2004年)

CMSの開発の御陰で、迅速にサイトを立ち上げられる開発環境が整い、そしてクライアントも簡単にサイト運用ができるようになりました。

当時、フランツはFlashでアプリケーションのデモを作りセールスをしていましたが、この年から、より多くのプロジェクトが、前年に開発されたCMSを使って行われるようになりました、

フランツは、雨の多いポートランドの濡れた歩道をヒントに、このCMSに「concrete(コンクリート)」という名前をつけました。

建物の建材であり、どのような物にもなるコンクリート。そして後でも追加したり削ることができます。コンクリートの出現が建設業界に大きな変化をもたらし、そして、彼らのCMSにも同じように大きな変化をもたらせる事が出来ればという思いから、「Concrete」と名付けられました・・・が、「コンクリート」という名前は商標登録が出来ません(アップルやマイクロソフトのような財力がなかったので)

とにかく、アメリカ公共広告機構の仕事をもとに、新しいバージョンのCMSが「Indie911.com」の音楽サイトとして誕生しました。.

 

Concrete v.3 - (2005年)

彼らは、他のシステムを使うのをやめ、Concrete CMSのみにフォーカスするようになりました。

会社の名前を変え、ヒップな、ポートランドのオールドタウンに新しいオフィスを構えました。そして、中規模なサイトを、どんどんConcreteで制作して行くようになります。

コミュニティーをつくる拡張プラグインなども開発されました。簡単なウィザードを制作し、サイトの中で記事を直接編集出来るようにしました。普通の企業のパンフレットサイトから社外ネットワークまで、Concrete CMSは、アメリカ大西洋地域の商用CMS市場で主導をとり始めました。

その中で制作されたサイトでは、KettleFoodsJTFPColorOfMySoundが挙げられます。

 

Concrete v.4 - (2007年)

Web2.0が浸透した2007年代、Concreteの開発チームは、少しずつ規模を拡大して行きました。

ユーザーのシステムを見直し、管理画面とフロントでの記事編集機能が融合して行きました。

その中で制作されたサイトは、Lemonade.comShopTextEnhancedBooksなどが挙げられます

 

concrete5 - (2008年)

5年もの開発期間とウェブのコンサルティング業務、それでも、世界は既存のCMSの枠から抜け出せていません。

彼らは月に7万ドルの維持費がかかるオフィスを持てるになりましたが、Concreteは、口コミでしか広がりません。フランツも2人の子供が出来ました。アンディーは「gig(プロジェクト)」よりも「Carrier(仕事・成果)」に目を向けるようになりました。新しい変化を求める時が来たのです。

彼らは初心に戻り、開発に取り組みました。無駄な機能をすべて取り除き、新しい機能を徐々に付け加えて行きました。インターフェースも完全にデザインし直しました。テンプレートの仕組みも完全に変更し、完璧な「concrete5」のシステムを作り上げたのです。

ブランドとクオリティーを維持しつつも、より寛大に製品を使ってもらえるライセンスを選びました。

とにかく、彼らは、ポートランドという狭いコミュニティーだけではなく、もっと大きな場所でウェブデザインコミュニティーに貢献したいと思ったのです。

そして生まれ変わった「concrete5」は、2008年6月初めにリリースされました。10月には、ソースフォージ(Source Forge)の月間オープンソースの称号を受け、11月には1日1000人以上の訪問者がサイトに来るようになりました。

現在、concrete5は、いろいろな言語に翻訳され世界中に普及し始めています。

本家のページには、今まで制作されたconcrete5サイトの事例紹介があり、世界中のメディアも注目しています。

「concrete5」のバージョン番号には「5」の部分が含まれていましたが、2016春より、混乱を避けるために「5」をバージョン番号に含めないことになりました。(詳細: concrete5 の Ver. 8 から「5」をバージョン番号から省きます

 

Concrete CMS - (2021年)

オープンソース化に伴い採用された「concrete5」という名称で10年以上親しまれていましたが、PortlandLabs はこの年、生まれた当初の「Concrete CMS」という名称に戻すことを発表しました。また、名称変更に伴い、公式サイトもリニューアルされました。

名称変更の経緯と公式サイトのリニューアルについては、「It's Here! The New Community Sites Are Live!」という記事に詳しく書かれています。

 

未来のConcrete CMS

執筆時点(2024年)では、コアチームは引き続き新しい公式サイトの改善に注力しているようです。そして、次のメジャーバージョンとなるバージョン10では、AI機能の搭載もロードマップに入っているようです。

長い歴史を経て進化を続ける Concrete CMS にこれからもご注目ください。